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堀 治喜「酔頓楼からの遠吠え3」

物書きの本望

知人からのメール。
「カープはすっかりチケットの取れない人気球団ですが、変わらぬ球団への批判は、ずっと筋を通し続ける堀さんのままで、…」

ハッとさせられ、やがて「筋を通す」のひとことにうれしさがこみあげてきました。

思えば、筋の通しはじめが2010年の「衣笠祥雄はなぜ監督になれないのか?」で、この本の出版にあたっては知人である地元新聞社の重役からも自重するようアドバイスされたものでした。

彼は原稿の中身を読む前に、タイトルを目にしただけで突き返してきたものでした。
オーナーの逆鱗に触れるということなんでしょうか、タイトル自体がすでに球団にご忖度の“カープ村”ともいうべき言論空間ではタブーだったのですね。

この本は2007年のシーズンオフに黒田博樹と新井貴浩のふたりが退団するというショックが引き金になって一気に書き上げた原稿。ふたりの同時退団に、チームを私物化している球団トップの傲慢さをはっきり見てとったのが動機でした。

その出版が3年後になったというタイムラグが、逡巡の証です。

最終的には、「せっかく書いた原稿をボツにしたくない」という、さもしい物書き根性が勝っての出版となりました。

結果は、おかげさまで大いに評判となりました。
なんといってもタブーをそのままタイトルにしてしまったのですから。

無言の圧力で入り口は締めることはできても、出口の向こうではファンが待っていたのですね、自分たちの声を代弁してくれる本の出現を。

それに気をよくして、というか励まされるようにして、つづいて執筆したのが2012年の「マツダ商店(広島東洋カープ)はなぜ赤字にならないのか?」です。

前作は黒田と新井の退団から球団のあり方を検証してみた、いわゆる「動機」といってもいいもので、こちらはそれを承けての「総括的なカープ論」。
タイトルの「なぜ赤字にならないのか?」から、経営的観点から論考したものと勘違いされてか、あちこちの大学の研究室にご購読いただき、再々、論文にも引用されているのは想定外のリアクションでした。

そして今回の「ズムスタ本」。
もちろんこれは、あのチケット騒動が動機となって書き上げたカープ論の「結論」。最終回答といってもいいでしょう。

カープによかれとも念じて書いた前2作。その思いに反してますます球団のエゴがハバをきかせているように見えていたところに、あの事件。もう原稿を書く手は止まりませんでした。

ということで「カープ批判」の3著作。
この間、カープ人気が沸騰し、そして3連覇するという“慶事”も重なって、ますます忖度は濃厚になってきたようで、これらの本に追随してのカープ批判本は、ついぞ目にすることはできませんでした。

それどころか、「ソンタク度」と軌を一にするかのように「ヨイショ度」も右肩あがり。
拙著「ズムスタ、本日も満員御礼!」の発売前日には「カープに学ぶ」という雑誌が刊行されて、まあこれは偶然にしても、カープ礼賛本、ヨイショ本は花盛り。
中には「オーナーを褒めるために物書きになった」と堂々とヨイショ宣言する筆者まであらわれる始末。

こんな絶望的な環境の中で、カープの3連覇にならって「カープ批判本」3連覇。「筋を通している」といわれて、つい目頭熱くした気持ちもご理解いただけるのではないでしょうか。

孤軍奮闘といってはうぬぼれに過ぎますが、このような批判精神なき環境ではメディアでの紹介はほとんど期待もできず、もしよろしければ読後の感想、推薦のおことば、罵倒コメント、何なりとSNSで発信、あるいはリツイートやシェアいただければ幸甚にて。

もちろん口コミも大歓迎です。


by suitonrou3 | 2019-09-08 10:08 | 楼人日記