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堀 治喜「酔頓楼からの遠吠え3」

お別れの年賀状

敬愛していたYさんが亡くなられた。


3日に年賀状が届いたばかり。

その方が今はもうこの世にあらず、鬼籍に入られてしまったことが未だに信じられない。



年末に手作りの塩をお届けに寄った際、この月末に少し大変そうな手術をされると聞かされてはいました。

しかし対面しての会話には力があったし、とりわけ僕を叱咤する時のもの言いには鬼気すら感じるようだったのに。


残念ながら生命力にかげりが見えていたことは否定できなかったものの、まさかこんなに早くその日がやってくるとは思いもよりませんでした。


ただ、毎年必ず元旦に届いていた年賀状が遅れたことに、いささかの不吉を感じたことも事実でした。

また、添え書きの文面も気になってはいました。


「…おかげで楽しい一年でした。感謝」


旧年の感謝をいうなら「本年もよろしく」の常套句がつづいてしかるべきでしょう。

それがないまま唐突に「感謝」で結んであって、年賀というよりお別れの挨拶のようでもあったのです。


いまになって読み直せば「一年」に「人生」を託したようでもあり、自分に今年がないことをYさんは覚悟していたのかも知れません。


「カープ猛者列伝」を上梓したことがきっかけで1999年に、当時カープ大野寮の寮長だったYさんと知り合うことになりました。

パーティとかイベントなどで顔を合わせる程度のおつきあいでしたが、そんな席でしきりに“黒田博樹”を語るYさんを知り、先年「黒田博樹 男気の証明」を書くにあたってあらためて取材をお願いしました。


それからは親しくおつきあいさせていただき、Yさんの人柄に触れるにしたがって敬愛の念を抱くようになったのです。


取材した際には不覚にも、黒田博樹氏との関係性にしか着眼できませんでしたが、聞けば聞くほどふたりの関係に浅からぬ縁というものを感じざるを得ませんでした。


「堀さんの本のおかげでテレビ出演、ひっきりなし」 と、人懐こい顔で自嘲気味に破顔されていたYさん。

カープへの復帰。日米通算200勝。リーグ優勝。そして引退と、ずっとつづいた“黒田騒動”の後始末をされるようにYさんも頻繁にテレビに露出し新聞紙上を賑わしていられた。


そして黒田博樹氏が野球人生に終止符を打つのを見届けたかのように、Yさんは人生の幕を閉じられた。

いかにも面倒見の良かった彼らしいエンディングということなのでしょうか。


カープの初代エース長谷川良平氏の晩年の闘病生活を、ずっと寄り添うように支えておられたYさん。

その役割を継投して彼にどのように寄り添えるのか、それを考えはじめた矢先のノックアウト。

悔しすぎて涙も出ません。


今年の早々にと約束したふたりのトークショーは、これでお預けになってしまいました。 それこそお約束の、「あの世で」ということですね。


思えば、先日の会食のときの会話をノリで撮影させてもらったのは、僕にも別れの予感があったからなのでしょうか。


これからは追善の供養のつもりで、何度も観ることになりそうです。



カープ大野寮の若手への接し方でもわかります。

いつもいつも他人のために、周りに良かれと精一杯生きてこられたYさん、無理に無理を重ねてこられたのでしょう。


年賀状にもありましたね、

「❉己を後にして相手を思いやる心」と。


本当にお疲れさまでした。

永い眠りを、ゆっくりお休みください。

黒田博樹 男気の証明

堀治喜 /オークラ出版

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by suitonrou3 | 2017-01-05 23:45 | 楼人日記