この土曜日から、京都の知人の知人であるコロンビア在住の画家、竹久野枝さんの個展が開催されます。
彼女については、今回の「個展行脚」のために瀬戸内寂聴さんが書いてくれた文章があるので、それを転載しておきます。
会期 5月19日(土)~26日(土)
19日は夕方から簡単なセレモニーを予定
場所
ギャラリーSORA
「恋と革命と漂白の血筋」 瀬戸内寂聴
竹久野生さんはダダイストの日本での元祖とされる辻潤の孫であり、女性解放の闘士として平塚らいてう主宰の「青鞜」でも最も若い同人として活躍した伊藤野枝の孫でもあった。野生さんの生みの父は辻潤と伊藤野枝の間に生まれた長男一(まこと)だからである。野生という名前に野枝の一字がつけられているのが嬉しい。
野枝は一の弟流二を産んだあと、アナキストの大杉栄に恋をして、潤と一を捨て、赤ん坊の流二をつれ大杉の元に走った。大杉の思想に傾倒した野枝は革命家の妻として、大杉と共に憲兵甘粕正彦に虐殺されている。二十八歳であった。
母に捨てられた一は、成人になって父潤の親友の武林無想庵と、文子夫人との間に生れたイヴォンヌと結婚して産まれたのが野枝であった。私は不思議な縁で宮田文子となった文子さんの晩年親しくなった。イヴォンヌと私が同年だというのも文子さんは私と親しくさせる因になっていたようである。
野枝さんは生まれてすぐ辻の友人で、竹久夢二の次男不二彦の養女にもらわれた。不二彦に育てられ三十歳まで、野枝さんはその事実を知らなかったという。野枝さんには養家に伝った絵の才能と、実の親たちの家系のコスモポリタンの放浪癖と詩的才能が伝っている。
野枝さんの美しい絵の純粋な色彩と、不思議な自由な構成画面から訴えてくる深い詩情の不思議さの中に、私は彼女の体の中に流れる祖父や祖母たちの恋と革命と漂白の熱い血を見ずにはいられない。
※「フォシリサシオン」という彼女独特の手法で描かれた、不思議な風合いの絵です。